東京高等裁判所 昭和30年(ラ)674号・昭30年(ラ)751号 決定
本件記録(東京地方裁判所昭和三十年(モ)第一三四五八号事件)中の調停調書正本によると、抗告人は申立人に対し本件建物の敷地について何等の占有権原のないことを認め、本件建物を収去してその敷地を昭和三十年八月末日限り明け渡すことを承諾したものであることが疏明される。従つて、抗告人は右収去命令の申立人吉原慎一郎が抗告人に対して右土地の明渡請求権を有することを確認し、ただ申立人は昭和三十年八月末日まで明渡を猶予したのであるから、もし、抗告人が右約旨に基いて任意に右土地の明渡をしないときは申立人は本件土地の明渡を求めるため家屋の収去命令を申請し得ることは勿論であつて、本件建物について抗告人主張のような所有権移転登記請求権保全の仮登記、抵当権の設定登記があつたとしてもこれによつて、申立人の抗告人に対する本件建物敷地の明渡請求権には何等支障はないものといわなければならない。そして、抗告人の主張するところは右調停において、本件建物の敷地について占有権のないことを認めたことの効力を争うものであつて、調停調書に記載されたものは裁判上の和解と同一の効力を生ずるものであるから、調停調書の記載は結局確定判決と同一の効力を有するものである。従つて抗告人が前記調停調書に記載された事項の効力を争う場合は民事訴訟法第五百四十五条の請求に関する異議の訴によるべきものであつて、該調停調書に基く収去命令に対する抗告において主張することは許されないところである。従つて、抗告人の右主張は採用することはできない。
(浜田 仁井田 伊藤)